熱狂は歴史を変え、その熱狂は一人の人間の言葉によって創り出される。
この番組を見ながらそんなことを思いました。

今回の池上彰解説塾はまたまた3時間スペシャル。
『戦後70年。世界を、日本を動かした名言を大特集!』とのコンセプトで言葉の力を取り上げていました。

今年で戦後70年、この間に景色は様変わりし、私たちが情報を手に入れる媒体は新聞・ラジオ・テレビへと進化していきました。現在ではインターネットもその大きな役割を果たすものになりつつありますが、70年を経てもなお、発信の主体が人間であることに変わりはありません。

さて、今回の番組で印象に残ったのは、ヒトラーの演説とキング牧師の演説でした。ヒトラーの場合、「ラジオの時代だったから通用したが、映像ならばあれだけの支持は得られなかったかもしれない」との解説はありましたが、ヒトラーとキング牧師を筆頭に、オバマ大統領やマララ・ユスフザイ氏等の演説には耳に残るフレーズや抑揚、つまりリズムの手法が使われていました。
また、ヒトラーとキング牧師に至っては熱意を伴う声の響きが非常に印象的でした。言葉が持つ意味はもちろんですが、その発信者が持つ熱意や声の勢いなどの相乗効果によって人々は熱狂するのだろうと思いました。

日本に目を向けると、現在の状況にも繋がる印象的な言葉が幾つかありました。
バカヤロー解散で有名な吉田茂総理は、当時批判を浴びていた防衛大学校の生徒に『自衛隊の存在が批判されるのは国民が幸せな時だと思って我慢してほしい』と語りかけたとのこと。また、所得倍増計画で有名な池田勇人総理は『10年間で国民の所得を2倍にする』と、インフラ整備を計画。資金調達のため、銀行へ預金を集めようと子ども銀行で預金の習慣を根付かせ、それを資金として会社に貸し付けると、会社は設備投資をして生産拡大するという経済の循環を起こし、なんと国民の所得は7年で倍増、10年では3倍近くを達成し、池田総理の「私は嘘は申しません」との言葉は、そのとおりとなったのでした。

さて、来たる3月14日に北陸新幹線が開通しますが、田中角栄総理は「より良い日本列島を作る」と、日本列島改造論で中核都市を新幹線と高速道路で結んで全国の交通網を整備し、往来を簡単にするとの青写真を描いて、日本の基礎を作りました。
なお、『日本列島改造論』がベストセラーだと知った田中総理は「おっそんなに売れているのか?じゃあ俺も読んでみよう」と口にしたとのこと。現代であれば‘ゴーストライター?’ともなりかねないのですが、田中角栄が語る日本の理想図を聞いた新聞記者や官僚らがその言葉を本として残したのだろうと、それだけ言葉に力があり、そこに熱狂が生まれていたのではないかと思いました。
なお、公共事業に絡む献金による金権政治等で田中氏の評価は分かれるところではありますが、現在日本列島が新幹線によってひとつに繋がりつつあり、その言葉が現実化していることを考えると、氏が偉大な政治家だったと後の歴史が教えてくれているのかもしれません。

その他、番組内では記憶に残る沢山の言葉が散りばめられ、個人的にはアントニオ猪木氏の「迷わず行けよ、行けばわかるさ」が単純で一番好きなのですが、『言葉』には歴史を動かしてしまう程の大きな力が秘められていることが理解できた今回の特番でありました。