選挙特番のレビューも3回目となりましたが、今回ほど『人の性』が如実に見えた選挙をいまだかつて経験したことがありません。
 近年、選挙が『風頼み』という体たらくであることは既知の事実ではありますが、野党に目を向ければ批判に終始せざるを得ないため、今回は総選挙ライブで感じた自民党のこれからについて取り上げてみます。

 さて、今回だけではなく毎回ですが、突出した存在感を放っていたのはやはり小泉進次郎氏でした。総選挙ライブでは初回から「ミーハーか!」と思わず突っ込みたくなるほど池上彰本人が追い掛けるという熱の入れようですが、今回は特にその進次郎氏の『したたかさ』が際立っていました。

 ハイライトは、進次郎氏が新聞に対する軽減税率について異を唱えた場面でしょうか。
 実のところ、池上さんも進次郎氏も新聞10紙を読み込むコアな読者なのです。しかし、氏は「新聞の主張が国民の皆さんに伝える上で筋が通っているか通っていないかはすごく大事なこと。増税を訴える新聞が(消費税を)軽減されるのは筋が通っていない。食品と同じように日々欠かせないものだから、という声があるなら理解できるが、事実は逆で、新聞がどんどん読まれなくなっている。この軽減税率のおかしさについてはずっと訴えていく」と発言、「新聞社を敵に回しますね」との池上さんの切り返しに、進次郎氏は「これで敵に回すとすれば新聞社のジャーナリズムってそんなもんなんだなと(思う)」と返し討ちするのです。

 ウォッチャーはこの遣り取りの最中に、右往左往した野党の姿が思い浮かんだのでした。なぜなら今回の選挙もメディアが風を吹かせたに過ぎないからです。
 小池氏の「排除」発言を執拗に報じ、立憲民主党への追い風を演出した、結構あからさまだったように思えます。そして今回、そのメディアの代表格である新聞に斬り込もうとする進次郎氏の姿に郵政改革を掲げた父純一郎氏が重なったのでした。

 また、生中継での進次郎氏の「ポスト平成・ポストアベノミクス・ポスト東京オリンピック、パラリンピック」との言葉は世代交代の前触れのようでありました。
 「自民党には反省すべき点が多々ある」「信頼回復」「危機感を強く持った」「野党がだらしないからというのではなく、自民党を応援したいと思ってもらえるように。これを課題として受けとめた」との言葉に、今大臣たちが号令のように発言する『謙虚』のホンモノが窺えたのです。

 その一方、「老練な政治家」と称されても表情ひとつ変えることのなかった二階幹事長、そしてインタビュー中に花付けが始まってもそれを止めることもせず、まるで秋葉原の風景を再現するかのごとく振る舞った安倍首相。
 残念ながらこの自民党トップの二人に『謙虚さ』を見い出すことはできませんでした。そこに「増税せよ」と論じながら、軽減税率の恩恵は受容する新聞と相通ずる『傲慢さ』が重なったのは私だけでしょうか。

 さて、その安倍首相へのインタビューへのクレームですが、政治記者による次期首相候補第一位の岸田文雄政調会長になされました。
 そこで岸田氏は丁重に詫びるのですが、総理大臣ポストの話になると「今与えられた仕事をまずしっかり勤め上げる」と発言するも、来年秋の自民党総裁選については、安倍首相を支えるとは言わず、「一年先のことは今の段階では申し上げるべきではない。控えなければならない」と続けたのです。

 番組内では池上さんの「安倍首相に異を唱えられる人が居ないのではないか」との発言が目立ちましたが、次の世代は確実に芽吹いており、進次郎氏が内側から異を唱えるように、もしかすると、メディアにおいても安倍政権に対しても、外側からではなく内側からの世代交代がそう遠くないのかもしれないと思えた今回の特番でありました。