気付けばここで長いことレビューを書いているウォッチャーですが、「2016年決定的瞬間!」と掲げたこの番組をトータルで見た感想は、今年は『戦後がいったん終わりを迎えた』のだな、ということでした。

 番組は5/27のオバマ大統領の広島でのスピーチから始まります。現職大統領による初の被爆地広島への訪問は感動的でしたが、番組は、核廃絶を訴えるオバマ大統領の傍らに核の発射装置があった、被爆地に核の発射ボタンが持ち込まれていた、という現実を暴きます。

 ウォッチャーは、この風景から今回の大統領選でのトランプ氏当選の理由が読み取れるような気がしたのでした。
 オバマ大統領の後にトランプ氏が選出されたということは、オバマ政治にNOが突き付けられた、と言い換えることもできます。『現実を傍らに伏せたまま理想を語る』オバマ大統領、その一方で現実に気付いた人々が怒りを抱く背景がこの場面から見えてくるように思えたのです。
 なお、原爆投下は非戦闘員への無差別殺戮であり、何気なく見ているきのこ雲もアメリカによって撮影されたもの、ということを私たちは心に留めておく必要があります。

 さて、この番組自体が「池上彰が選んだ今年を象徴する写真を元に、視点を変えると違う捉え方ができる」とのコンセプトで作られており、普段あまり報じられないリアルの提示に考えを巡らせた方は多いのではないでしょうか。

 しかし池上さんがシン・ゴジラを取り上げるとは意外でした。
 そしてそこから「かの国の言いなり」「かの国の属国」との言葉をピックアップし、『2012年アーミテージ・ナイレポート』を引用すると、「日本政府はTPPも駆けつけ警護もアメリカからの宿題をこなしているだけ」とサラリと言ってのけたのです。
 本来、ニュース23あたりで小難しい顔したキャスターにより報道されがちなこの事実を、平日のゴールデンであっさり言えるような時代になったのだ、とウォッチャーは素直に驚いたのでした。

 実はウォッチャー、ここでレビューを書きつつ「これアメリカさんの掌上だなぁ」と思ったことが幾度かあります。
 例えば前回、南スーダンの自衛隊の駆けつけ警護について触れました。その中で、国際貢献に至るきっかけが、湾岸戦争後の感謝広告の中に日本が見当たらなかったことによるトラウマだと解説されましたが、その広告はアメリカの新聞に掲載されたもの、とのことでした。
 湾岸戦争の糸口となったナイラ証言の経緯を知っていれば、その広告がアメリカの新聞紙上だったと耳にするだけで首を傾げるような気もするのですが…。
 このように普段のニュースで見過ごしがちな話題の中にこそ、鉱脈への手掛かりが隠されていることがあるのです。

 また、番組内では安倍政権が神道政治連盟と創価学会という二つの宗教組織によって支えられている旨を取り上げていましたが、以前ここでも触れたように、オバマ大統領の広島訪問の前日に行われた今年のサミットで各国首脳を伊勢神宮に迎えたことも、戦後の終わりを象徴する出来事のように思えました。

 奇しくも今日、安倍首相がハワイを訪れていますが、現職のアメリカ大統領と共に日本の首相が真珠湾を慰霊するのは初めてのことで、安倍首相としては『日米の和解の価値を世界に発信する』思惑があるとのこと。
 これもある意味、トランプ氏が次期大統領に就任することで針路が読めなくなりそうな日米関係を見据えた動きであり、日米外交における総仕上げとも言えるでしょう。

 一幕が降りた後の世界はどう変化していくのでしょうか。来年以降のニュースも見逃せないものとなりそうです。