まさかアメリカ大統領選で池上さんにお目に掛かれるとは、などと油断していた水曜日、その上を行く「まさか!」が起ころうとは思いもしませんでした。

 新大統領がトランプ氏になるなど、アメリカそして世界の知識層は想像だにしていなかったはずです。しかしそこは池上彰チーム、知日派・いわゆるジャパンハンドラーの一人であるアーミテージ氏に、トランプ氏当選に対してもインタビューがなされており、その抜かりの無さにニヤリとしてしまいました。

 さて、そのアーミテージ氏ですが、印象的だったのは冒頭から「sorry」の言葉が発されたことです。「全世界にいるアメリカの友人たちに このような事態になったことをお詫び申し上げたい」から始まるのです。
 そしてこのように結びます。「トランプ政権においては米国は外交的な知恵を必要とします」「日本の知恵も必要となる これまでになく世界各国の支援を必要とすることになるでしょう」「日本にはもっと声をあげてほしいと思います」と。

 なお、トランプ氏当選の背景には、ニュース等でも報じられていますが、白人中間層の強い不満があるとのことです。
 私は、オバマ大統領が「若い人とお年寄り、金持ちと貧しい人、民主党員と共和党員、黒人、白人、ヒスパニック、アジアン、ネイティブアメリカン、ゲイとストレート、障害者と非障害者」とあらゆる者に触れながら「CHANGE」「YES WE CAN」と勝利演説したあの8年前のシカゴの公園の風景を思い返しました。あのとき、アメリカは酔いしれていました。

 しかしそれから8年後、政治経験もなく、躊躇なく差別発言をする暴言王がアメリカ大統領になるなど誰が予測できたでしょうか。トランプ氏は過激な発言をすることにより、既存政治と拡大した格差に絶望した白人中間層の怒りを巧みに拾い集めることに成功したのです。
 夢を描いた8年前と怒りを拾った今回の大統領選のコントラストを思うと、民主主義とは一体誰のものなのだろう?と何とも言えない気持ちになります。

 さて、3回に渡る史上最低のテレビ討論会からも分かるとおり、トランプ氏自身に政策を期待するのは無駄であり、新政権の人事がまともであるよう願うばかりですが、現時点では大統領選中に揉めていたはずの共和党上層部を登用するなど、選挙中には表立って見せなかった実業家の一面も見せ始めているようです。

 その一方で、外交においてはその無知さゆえに何色にも染まることが可能という利点があることも事実です。
 従来政治を踏襲しないという部分においては「プーチン大統領を尊敬する」「北朝鮮の金正恩氏と会う用意がある」など、今までの価値観を基とした世界秩序がガラガラポンになる可能性も否定できず、今後ブレーンにより教育は施されるでしょうが、上述のアーミテージ氏の発言のとおり、世界各国にとっても外交的な知恵が必要となり、ここで日本も声をあげるチャンスが到来したと捉えることもできます。

 奇しくも12月には日露首脳会談が行われますが、トランプ氏がプーチン大統領を尊敬するのであれば、プーチン大統領とケミストリーが合うと言われる安倍首相とも不仲になるとは考えられず、米日露で友好関係を築けたら…、などと夢は膨らむのですが、その一方で、先日の英国EU離脱の件でも垣間見えたように、この怒りを拾った戦術が「煽動で終わった」と歴史に刻まれることの無いよう祈るばかりです。