砂漠と見られる風景にナイフを持つ黒い服の男。その左右の足元には、跪きオレンジ色の服を身に付けた男が二人。そのコントラストが印象的だったあの映像。日本人であれば、「あっ!」と衝撃が走ったのではないでしょうか。

イスラム国日本人人質事件。
既にイスラム国による拘束が知れ渡っていた湯川遥菜氏の隣には、中東リポートでお馴染みのジャーナリスト後藤健二氏の姿がありました。

今回の池上彰解説塾はこの人質事件を受け緊急生放送です。
池上さんとも親交のある後藤氏を人質にした過激派組織イスラム国、この国家を名乗る組織が建国に至った背景など詳細な解説がなされました。

個人的な意見で恐縮ですが、今回のイスラム国による人間の命を軽んじるようなやり方に私は怒りを覚えます。
テロは決して許されるものではありませんが、イスラム国へと至る変遷を歴史と照らし合わせて見ていくと、現在のイスラム国の在りようを理解することが可能です。

そもそもイスラム国とは、ブッシュ政権時アメリカによるイラク攻撃でフセイン政権が倒れた後に発生した反米国際テロ組織アルカイダ系を始まりとし、そのアルカイダでさえ愛想を尽かしたほどの過激な集団であるとのこと。
彼らの野望は、第一次世界大戦中に結ばれたサイクス・ピコ協定によってかつてのオスマン帝国上に西欧諸国が勝手に引いた国境線を返上、イスラム帝国の広大な土地を2020年までに全て取り戻して、カリフと称するアブバクル・バグダディが最高指導者として支配する国にしようというものです。

現在、戦闘員は3万人、そのうち外国人兵士がおよそ1万5000人を占めていると言われています。外国人戦闘員は世界80か国から集まっているのですが、その背景には、中東の紛争を嫌って平和な欧米に移民したイスラム教徒の子ども達が、キリスト教文化圏で上手く生活ができなかったり、失業したりするなど、その閉塞感の中でイスラム国の主張に共鳴し、かつて親が存在した中東へと戻っていることもあるようです。その一方で、給料の良さも若者が惹かれる要素のひとつとなっています。

さて、今回の一連の事件でイスラム国は人質にオレンジ色の服を着せていますが、これはアメリカに対する強烈なメッセージとなっています。
それは、反米国家キューバに米軍基地があるのですが、そこにはグアンタナモ収容所と呼ばれる施設があり、アメリカ軍はアフガニスタン攻撃時にタリバンを捕まえてここに収容しました。なぜキューバの収容所なのか?その意図は、米国内ではアメリカの裁判で裁かれ人権が守られるため、残酷な拷問を可能にするためここに送り込んだと言われています。その際、収容した人達にオレンジ色の服を着せて虐待が行われたとのこと。
イスラム過激派にしてみればこれが根底に流れる恨みであり、囚人服をオレンジ色にしているのも過去のアメリカの行為に対する怒りの表現であることが分かります。

現在の人質事件のみ切り取って見てみればテロ行為は到底受け容れられるものではありませんが、その歴史を知ると中東諸国の積み重なった怒りの発露であると理解することもできます。

しかし、これ以上怒りの歴史を綴らないために全ての人が思いを至らせるような世の中にならないかと願うばかりです。
リアルタイムで事件が動いていることもあり、怒りの連鎖を断つためにも、現在は後藤氏の無事を心から祈るよりほかありません。

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