ひっそりと終了した感のある『田原総一朗VS池上彰』の番組収録でしたが、この機会を逃すまいと、なんと日本テレビ名物プロデューサーT氏も観覧参加していたというなかなか貴重な公開収録でした。これが初対面という田原氏と池上さんでしたが、「激論」を掲げたテレビタイトルとは裏腹にお互いを尊重している様子が伝わり、収録現場は終始和やかな雰囲気に包まれていました。
収録の中で触れられたのは、安倍首相への見解、NHKの裏話、「自分たちは『ニッチ』のおかげで活躍できている」という、受け取り方によってはメディアの主流に対して少し皮肉を含んだかのようなお話。
ちなみに、『ニッチ』が意味するところとは、新聞・テレビなどは、例えば集団的自衛権であれば、『その行使について』『是非について』議論・解説をしますが、『そもそも集団的自衛権とは何ぞや』についてきちんと説明したものは見当たらず、『集団的自衛権というそれそのものの意味』を池上さんや田原氏が説明する役割を担っているという、言わば主流メディアの取りこぼし=隙間(ニッチ)をきちんと拾っているということです。

また、政治家との距離の取り方について、田原氏は「政治家とは食事できる」、池上さんは「政治家が纏う魅力に好きになってしまうから、一線を引くために食事はしない」という二人の対照的スタンスも面白いものがありました。
そして一番の見どころは、ジャーナリズムの『情と理』のバランスについて、それぞれの考察が語られたことでしょうか。『情』とは感情や情熱のこと、『理』は理論や理念のことです。
番組放送が残っているため、ここでは割愛しますが、とても興味深い内容となっていました。

印象的だったのは、大学在学時の池上さんが東京12チャンネルの田原氏を『変わったことをやる人がいる』と、その存在を認識していて、当時の著書を購入していたというエピソード。
すかさず田原氏から「『こうはならないぞ』というロールモデルにしたんでしょ?」とツッコミが入ったり、いつもどおり我が道を行く田原氏を池上さんが笑いながら『ナチュラルな人』と評したりなど、二人の遣り取りはとても微笑ましいものがありました。

もう一人、津田大介氏は池上さんとの共演がよく見られますが、あの若さでありながら、台本はあったのでしょうが、田原氏の奔放っぷりに枠からはみ出 しそうになる話題をまとめて次の話題に繋げる役割をこなしており、頭の回転の早さが窺えました。また、ゲストで登場していたはずの池上さんですが、身に付いてしまっているのか、議論しながらも収録の残り秒数を気にかけていたりなど、現場への配慮が垣間見えた池上さんらしい一幕も。

余談ですが、収録終了後、客席を背景にしてのテレビスポット撮影があり、見慣れたグレースーツの後ろ手に組まれた田原氏の手元には、その間ずっと池上さんの著書 『知らないと恥をかく世界の大問題』が握られていました。
所感ですが、御年80歳となる田原氏がテレビジャーナリズムの第一線で未だ活躍している理由がほんの少し理解できたような気がしました。