『教養を身に付けることは歴史を学ぶこと。歴史を学ぶことによって人間がどのようなものかを知る。人間を知るとはつまり自分を知ること。自分は何処から来て何処へ行くのか知る力を付けることが教養である』

池上彰には沢山の顔があります。
著作家としての顔、解説者としての顔、司会者やモデレーターとしての顔。
この番組は、池上さんに話を訊きながら、その中でも主となるジャーナリスト、そして大学教授としての顔を取り上げるという形で進んでいきました。

ジャーナリストの池上さんは世界を飛び回って取材をしています。
その数は67の国と地域に及びますが、巷では危険地帯と言われるパキスタンや貧しく衛生面に問題ありとされるバングラデシュなど緊迫感ある場所がほとんどです。
池上さんは言います。
「パキスタンではテロが頻繁に起こりますが、その一方で経済発展の可能性も秘めている。バングラデシュやイランでも、現地を訪れるとそれぞれの国が発展しようとする活力や熱気があり、その空気を直接肌に感じることでこの国が発展するかどうかの予測がつく」と。

池上さんの中には『現場を見ないで何が語れるの?という思い』つまり、『ジャーナリストとしてニュースの現場を見ないと何も語れないという思い』があるとのこと。
パレスチナのガザ地区のような地域に積極的に行くことについては、「皆が危険だと勝手に思い込んでいるところに敢えて行く、行ってみれば全然危険じゃないよと皆にアピールしたい」と天の邪鬼的硬派な一面も垣間見せていました。

また、教養を身に付けることの大切さについて触れ、冒頭の言葉となります。
「歴史とは人類が何百年何千年に渡り経験してきたさまざまな教訓や反省、夢と希望、そういうものが全部詰まっている。それを学ぶことによって自分の体験以外のことができる。あるいはそれを追体験できる。そこから将来自分はどう生きていけばいいのかが見えてくる。人間がどのような失敗を繰り返してきたのか理解できると、人間に対する洞察力が生まれる」と。
池上さんの歴史をなぞる認識の中に『教訓や反省』のみならず、『夢と希望』という言葉が含まれているのが印象的でした。

その一方で大学教授として、「経済学とは、お金を儲けるための学問ではなくお金持ちになるための学問でもない、資源の最適配分を考える学問である」と定義。また、「ビジネスでは従来の発想に捉われない、マニュアルにとらわれない発想が重要」と発言。
池上さん的には学生の知的好奇心を刺激しながら、その反応で自分の知識の欠けている部分が自覚できたり、若い人の反応そのものから学ぶところもあり、『教えるということは自分が学ぶこと』と結んでいました。

池上さんの博学多才ぶりは広く知られるところではありますが、わずか75分のこの番組で池上さんの中にある豊かな視点と遥かな視野が伝わってきたような気がしました。