池上さんは足を運ぶ。記者時代の名残なのでしょうか、ある話題について取り上げる際、解説するのみならず、池上さんはその現場まで自ら取材に行ってしまうことがあります。
今回の池上彰解説塾2時間スペシャルでは、池上さんは福島第一原発に行ってしまいました。

新聞やテレビでは「福島原発の事故処理は…、貯水タンクから水が漏れて…」と言葉で語られますが、今回の福島原発への直撃取材にはリアルがありました。
防護服姿の池上さんの左胸には名札、靴下は2枚履きで手袋は3枚重ねです。現地の放射線量は60μSv/h、東京の0.03μSv/hと比べるととてつもない線量だということが分かります。現場は物々しい雰囲気で、これが同じ日本の出来事なのかと少し気が遠くなりました。

池上さんを案内していた東京電力松本さんは、震災当時のスポークスマンですが、だいぶ痩せていました。原子炉建屋は整備されているのですが、その周りを取り囲む汚染水のタンク。その立ち並ぶ圧迫感とまだまだ増え続けるであろうタンクの数、そして現場で作業する方々のことを思うと胸が痛みました。溶け落ちた燃料の取り出し開始は2020年ごろ、廃炉には2050年まで掛かるとのことです。

その一方で、先月発表された政府のエネルギー基本計画では①原発をベースロード電源にすること②原発の再稼動③原発の輸出、が記載されています。
原発を止めない理由として①電気料金の値上げを止めるため②CO2削減③海外への原発輸出、が挙げられます。世界には原発の需要があり、それをビジネスチャンスだと政府は捉えているのです。

福島のような現状を抱えている日本では新しい原発を作る可能性はないが、海外でなら原発を受注することができ、 日本の技術を輸出することができる。そのためには日本で稼動させる必要があり、今回のエネルギー基本計画はそんな思惑も含めて作られている、とのこと。

日本は基本的に矛盾を抱えがちな国ではありますが、現実を見ながらの綱渡りをやってのける国でもあります。厳しい現実を抱えながらも新しい可能性に向かって動いていく。
私たちはそのひとつひとつを知り、考えて、自分のレベルで動いていくことしかできませんが、今ある現実に無関心ではいけないなと考えさせられた今回の解説塾でありました。