池上さんはこの番組の終盤で「決して諦めてはいけない、もっと自信を持っていいのだ」と締め括っていました。

この言葉を聞いて、日本の立ち居地はネガティブなのだなと思いました。その最大の原因は『日本の圧倒的な資源の少なさ』にあります。自国の資源に頼れない日本が世界の国々とどう渡り合うのか、今回の番組はそこに焦点が当たっていたように思います。その弱点をカバーするものとして池上さんが挙げたのは人材、つまり『日本の技術力』でした。

さて、最重要資源のエネルギーで今起きている問題と言えば、原発稼働停止により火力発電に移行し、海外輸入に頼る燃料の液化天然ガスがアベノミクスによる円安で価格高騰、電気料金の値上げが止まらないということです。

この日本の状況が一変する、つまり天然ガスが今より安く買えるきっかけとなるエネルギー革命が現在アメリカで起こっています。それがシェール革命です。
シェールとは、薄い岩がミルフィーユ状に重なっているもので、その層の間に天然ガスやオイルが含まれることは既に知られていたのですが、地下約2,100メートルまでの掘り下げ圧力に耐えうる採掘技術がなく、掘り当てることができずにいたのです。しかし、1990~2000年に採掘に必要な特殊鋼管が日本の技術によって創り出され、シェールガスが採取可能になりました。
安定的な天然ガス供給が可能になったアメリカですが、日本のTPP参加表明により、シェールガスの輸出が予定されています。アメリカは世界最大のエネルギー輸入国でしたが、10年後には世界最大のエネルギー生産国になることが想定されています。また、自国でエネルギーを調達できるようになったため中東への興味を失ったことも否めません。

これに打撃を受けたのが中東カタールです。カタールはアメリカへの輸出を目論み、5兆円を投資して天然ガスプラントを新設しましたが、シェール革命により主な顧客を失った形となりました。そこでターゲットをヨーロッパに変更。長期契約を結ぶ日本にも短期契約やディスカウントの話を持ち込むなど、態度が低姿勢になりつつあります。

一方、カタールから天然ガス供給が可能になったヨーロッパですが、それまでの取引先はロシアです。ロシアもヨーロッパ需要が減少したことにより、ターゲットを東アジアに向けるようになります。そこで登場するのが日本です。安倍首相とプーチン大統領の仲は良好で、日露天然ガスパイプライン事業計画などで今後の日本の天然ガス供給が一変する可能性もあります。また、ロシアとの友好ムードが高まれば懸念材料である北方領土問題の解決にも好機であることは間違いありません。

このシェール革命で日本だけピックアップすると、『日本の技術力』によりアメリカでシェールガス採掘が可能になり、カタールが低姿勢になり、ロシアとの北方領土問題の糸口となるかもという、地球をぐるーんと一周する面白い構図が見て取れます。

しかし、パラリンピック終了後、ウクライナ情勢をめぐるクリミア半島のロシア編入により、現在日本は微妙な立ち居地となっています。クリミアをめぐってはヨーロッパとロシアの争いの歴史がありますが、直近の歴史だけを切り取って見た場合、ロシア系住民がクリミアに移住し、その住民による投票でクリミアが独立を表明してロシアに編入したというならば、背後にうっすらと日本の北方領土の歴史も重なってくるような気がしないでもありません。
アメリカは軍事行使をしないと表明しましたが、これからのアメリカ・EUの制裁により世界情勢が一変する可能性もあり、これからの日本政府の舵取りに注目したいところです。