「本とペンを手に取りましょう。それは最も強力な武器なのです。1人の子ども、1人の教師、1冊の本、1本のペンで世界を変えられます。教育こそが唯一の解決策なのです。教育を第一に」

これは2013年7月国連本部でスピーチしたマララ・ユスフザイさんの言葉です。

2009年、11歳だったマララさんは英国BBCなど世界のメディアにパキスタンの女性問題を訴えて注目を浴びましたが、2012年、女子教育を認めない武装勢力タリバンに銃撃され、英国に緊急搬送されました。このニュースは世界中を駆け巡りました。彼女は奇跡的に一命を取り留め、現在は英国で学校に通いながら女子教育の重要性を訴え続けています。

日本に生まれた私達は、幼児教育、義務教育を受けています。日本語を読むことも、簡単な計算ができることも当たり前です。しかし、今回ジパングで池上さんが降り立ったパキスタンではそれが当たり前ではありません。池上さんが街に出ると、そこには奇妙な日本語が書かれた車が多数走っていました。1950年以降、綿花の取引が盛んで日本により沢山の投資を受けたため意外にも親日国であるパキスタン。日本人ならその文字がおかしな日本語であることが分かりますが、パキスタンの識字率は全体で58%・農村の女性に至っては34%、パキスタンでは自国の文字でさえ読めない人が多数存在しています。

パキスタンの人口は現在世界第6位の1億9000万人で、16年後には3億人を突破し、世界第5位の大国となると予測されています。人口の多さは成長の伸びしろであり、今後大きく経済発展していく可能性を秘めています。
一方で、貧困と教育の欠如から来る無知が様々なテロを引き起こしています。パキスタンの主な教育問題は女性と子供です。パキスタンの小学校中退率は世界ワースト2位で、貧困のため半数が小学校卒業前に辞めてしまいます。また、貧しさのため衣食住の面倒を見てくれる神学校に行くと、そこでタリバン教育を受けテロリストになっていたというケースもあります。

なお、タリバンとは極端なイスラム原理主義に基づいて国を統治しようという考え方の武装勢力で、その拠点は部族地域と言われています。部族地域ではパキスタン政府の統治が及んでおらずテロの温床となっています。意に沿わない人を鞭打ち刑にするなど暴力で人々を支配するパキスタンタリバンは、女性は教育を受けるべきではないと、今まで多数の女子学校を破壊し、女性が学校へ通うことを妨害してきました。

上記のような教育環境の改善支援として、日本の援助により女性の識字率を上げるなどの目的で「ダムケ学習センター」が運営されています。そこに通う女性達が口にするのは「いい人間になりたい、先生になりたい、医者になりたい」などパキスタンの未来の人々に貢献しようとする言葉ばかりです。3年前のプロジェクト開始以降、5万人に機会を提供し、今後3年で150万人に増やす計画です。同様に一度学校を辞めても自分のレベルから再度学ぶことのできる学校も作られています。
また、首都イスラマバードには建設機械の実地訓練を行う技術訓練学校があり、これも日本政府から70億円の援助を受けて運営されています。ここで技術を身に付け即戦力として社会に出ることが可能となりますが、これには深い意義があります。パキスタンタリバンの拠点の部族地域には学校がありません。従って、勉強することができず職にも就けないため、貧しさのあまりタリバンの仲間となり、テロリストとなっていく傾向が見られます。しかし、この訓練校の就職率は8割で、手に職をつけて貧困から抜け出すことがテロ対策となっているのです。

池上さんは「アメリカはテロを叩きますが、テロを生み出す土壌はそのままです。しかし日本は、教育によりテロを生み出さない土壌を作ろうとしています。アメリカは病気で例えると対症療法、日本は体質改善を目指す漢方薬のようなもの」と解説していました。
きちんとした教育を受けることにより、今後の識字率が上がっていけば、パキスタンタリバン運動は極端な考え方で少数派であり、間違っていると理解できる人が増えていくはずです。そうなればテロに走る人も減少し、平和への礎となって、パキスタンの今後の経済発展の可能性も見えてくることでしょう。

「教育が国を変える」光と影で表現すれば、影の象徴であるパキスタンタリバンに狙われているにも関わらず、その重要性を世界に訴え続け、パキスタンに光を照らそうと頑張っているマララさんに今後も注目です。